春は喜びや期待に溢れる季節ですが、一方で就職や進学、転勤など生活環境に大きな変化をもたらす季節でもあり、心や体にさまざまな不調を訴える人がとても多くなります。
東洋医学では「春には肝(かん)が消耗する」と言われています。
この肝とは肝臓を通る経絡(けいらく)を指しており、体全体を整える自立神経の様な役目を担い、感情や筋肉にも作用するという大変重要なものです。
自律神経とは体内の環境を整え、すべての内臓、血管、分泌腺などの働きを制御するもので、これが乱れるといろいろな症状が表れます。
上半身や特に首から上に症状が表れやすく、筋肉にも影響が出ることもあり、頭痛、めまい、寝違え、ぎっくり腰、急な下痢など、その症状は多岐に渡ります。
ではどうして春になるとこの自律神経が乱れてやすくなってしまうのでしょうか?
立春を過ぎると、冬に比べて日の光は明るくなりますが、まだまだ気温は低い状態のまま、という日が多く、その様な時に、体は明るくなった日差しに春が来たと感じつつ、まだまだ足元の気温が低い為に混乱状態になることがあり、さらに、立春特有の気圧や気温の激しい変化に対応するために、自立神経が消耗しがちになります。
そして普段の生活でもストレスなどで自律神経が乱れやすい人は、特にこの時期に不調が出てしまいます。
特に、「暖かい春を迎えたのに、手足が真冬みたいに冷たくなって寒さを感じてしまう」という事を最近よく耳にします。
この状態になってしまう体の仕組みをすこしだけお話すると、私たちの自律神経は、緊張モード(交感神経)とリラックスモード(副交感神経)を緩やかに繰り返して心と体のバランスを取っています。
ところが、自立神経の働きが乱れてしまうと、このモードの切り替えがうまくできなくなり、緊張モードの状態が続いてしまうことがあります。
この緊張モードの状態が続くと、手足の血行が悪くなり、結果冷えを感じてしまうことになります。
これに加えて、感情に関わる「肝」が消耗すると情緒が不安定になり、訳もなくざわざわしたり、不安になったりすることがあります。
また、とにかくだるい、やる気が出ない、眠いと言った声もよく聞かれます。
これは体の調整でエネルギーを消耗してしまい、エネルギー切れになってしまったからです。
では、これらの不調を改善するために何ができるでしょうか。
まずはベットに入る時間を早めてたっぷりと睡眠をとる事です。
深い睡眠は心と体の機能を回復させる事にとても有効です。
特に私がお勧めしているのは、時間に余裕をもったスケジュールを立てる事です。
春は年度末や学期末で忙しい時期ですが、そんな時こそあえて遊びの時間をスケジュールする事が大切です。
次の予定までの空いた時間にゆっくりとお茶をのんだり、体を休めたりする時間は、一見すると無駄なように見えて、実は心と体をかなりリセットしてくれます。
春に不調を訴える多くの人が、いつも頭の中が予定の段取りでいっぱいだったと言います。
東洋医療の伝統医学書にも春の過ごしかたについては、「朝ゆっくりと起きて、髪をほどき、のんびりと庭を散歩するように、ゆったりと日々を送る」などと書いてあります。
さらに余裕があれば足湯やヨガをしたり、風のない穏やかな日に散歩に出かけるのも上(頭)に上がった気(エネルギー)を下におろしてあげる事になります。
春にしっかりとケアをしてあげれば、夏を健康に過ごせると東洋医療では言われています。
夏バテ防止のためにも春をゆっくりと過ごしてみませんか。
寄稿:指田 笑美子
心理カウンセラー・セラピスト・鍼灸師
SASHIDA EMIKOカウンセリング・セラピーサロン